『明治怪奇譚「エコウメグリ」~三つの錦絵を辿る物語~』目と耳で村を恐れる

全国150万人の”美術館に行ったときは音声案内を借りる”皆さまいかがお過ごしでしょうか。鈴村リク (@alfbds0954) です。

今回は現在博物館明治村で開催されている
『明治怪奇譚「エコウメグリ」~三つの錦絵を辿る物語~』に参加してきました! 

【ストーリー】
凄惨な事件を綴った「錦絵」からはじまるホラーサウンドツアー。

明治時代のとある村で凄惨な事件が起こってしまった。
その事件以来、村では不可解な事件や奇怪な現象が頻発することに。
村で巻き起こる事件や奇怪な現象の先にある「真実」とはいったい―?
ー背筋が凍るような出来事にあなたを誘うー
 


www.youtube.com

個人的満足度★★★★★★★★☆☆ 8/10点 

≪一言≫
錦絵って味があって怖くて良いよね

ざっくり感想

先日愛知県にある博物館明治村に遊びに行きました。
目的としては2つあって、その1つが今回ご紹介するイベントの『明治怪奇譚「エコウメグリ」~三つの錦絵を辿る物語~』を体験したかったから。


こちらは方南町を拠点に、いまや全国各地で人々を恐怖のどん底に突き落としているオバケンが制作したコンテンツ
気づいたら全国のカラオケ施設で遊べる謎解きとか出してたり、境港でゲゲゲの鬼太郎とコラボしてたり、オバケンの活躍の場が確実に広がっていると感じます。


明治村自体もけっこう昔から謎解き公演に関してはずっと開催されていて、この手のコンテンツとのコラボは積極的なイメージがありましたが、まさかオバケンとコラボするとは。
しかも特設会場を設けるのではなくて園内を回るホラーサウンドツアーというじゃありませんか。どういう仕掛けを繰り出してくるか非常に楽しみでした。


キットは正門にあるミュージアムショップ、北門にあるSL東京駅売店で購入が可能。


また、この作品はキットと別にLocatone というアプリが必須
アプリを起動しながら明治村に点在するスポットを巡り、音声を聞くことで物語を追体験していくシステムになっています。


私はエコウメグリで初めてLocatone を知ったんですが、思わず「科学の進歩ってスゲー!」と唸ってしまった。
マップ上にあるスポットに近づくと、自動でその場に応じた音声が再生されるので臨場感は抜群。
加えてスポットとスポットの間では薄く環境音が流れており、敢えて現実に引き戻さないような工夫がされている。かつ物語の後半ではその空白の時間がある種一番しんどい演出が加えられより焦燥感を掻き立てていきます


明治村自体初めてではないのに、そこに漂う空気感は全くなじみのないものに変わっていましたね。

3枚の錦絵を巡って

そもそも錦絵というものは浮世絵・木版画の一種であり、明治時代においては新聞に掲載されるような事件をよりキャッチーに大衆に見せるために使われたりしたそう。
東京日々新聞などがその最たるもので、ゴシップ的な要素の元、エロ・グロ・怪異、なんでもござれな媒体だったのです。

明治村にも今回の公演に合わせ東京日々新聞の企画展が開催されており、合わせて観ておくと、より世界観への理解が深まりました。



今回登場する3枚の錦絵はどれもいわくつきのものであり、その一つ一つにエピソードが用意されています。

スポットを巡ることでエピソードが少しずつ紐解かれ、情報が肉付けされていく。
事件が起これば時折街中で聞こえる噂話から現場を特定したり、またある時は街に出没する幽霊の正体を推理したりと、絵には描かれていない真実を深堀りしていくわけです。


3つのエピソードは独立していながらも緩くつながっており、物語が進むほどにこの"村”に対する理解度と恐怖感が増してくる。
ゲーム的にはどのエピソードからスタートしても良いことになっているが、個人的には最初に書かれているエピソードから挑戦することをお勧めしたい。


あまり詳しくは書けませんが、恐怖からくる人間のむき出しのエゴ、そして同調圧力、そして倒錯っぷりが存分に楽しめます。


ちなみにホラー作品ではありますが直接的な恐怖は抑えめなので、怖いのが苦手な方でも大丈夫だと思う。

“村”の持つ力

エコウメグリでは明治村全体を1つの村に見立て物語が展開していきます。
最寄駅からバスで20分揺られないと辿り着けない明治村は、ある意味で本当の村であり、まさにこの公演の舞台としてぴったりのロケーション。


だからかもしれませんが、村特有の狭く完成された世界というものを再現するときのパワーはすさまじい。
明治時代に建てられ、この村に移築されてきた建物たち。柱の傷や剥げた塗装、床のきしむ音などは全て本物 なのです。




それゆえとあるシーンで耳から聞こえてる惨劇は、実際に目の前で起こっているかのような迫力で、再生が終わった後には心にずっしりとくるものがありました。

とある事件が発端となり狂ってしまった村、3枚の錦絵を全て巡った先に待ち受ける怒涛の展開は私たちを否が応でも物語に引きずり込もうとしてきます。
ここら辺の演出がとにかく秀逸。
私も恐怖に立ち向かいながら、なんとかこの因果に終止符を打つことができました。

おわりに

『明治怪奇譚「エコウメグリ」~三つの錦絵を辿る物語~』は明治村というシチュエーションとサウンドツアーシステムのシナジーががっちりかみ合ったことで実現した、とても満足度の高い公演でした。

最初にエコウメグリが明治村に来た理由の一つと言いましたが、本当に遊べてよかったと思います。

残念ながら今月末で終了してしまうプログラムなので、興味のある方は今からでもぜひ行ってみてください。


余談ですが明治村内の飲食店ではコラボメニューも実施していました。
とあるエピソードでカギとなる薬指が入ったオムライスを食べました。

指を模したソーセージの先端が爪状にカットされていて、めっちゃ悪趣味。
彼に習いきちんと完食。美味しゅうございました。