全国150万人の”くしゃくしゃになった紙を持っている”皆さまいかがお過ごしでしょうか。鈴村リク (@alfbds0954) です。
今回は現在マイラボ渋谷で開催されている
『その怪文書を読みましたか』に参加してきました。
展示会の概要から私の感じたこと、考察を含めて記していきます。
【ストーリー】
SNSを中心にフェイクニュースや疑似科学などの不確かな情報が紛れ込む現代において、正しい情報を精査し、読み解くことは難しくなっています。
今回の展示は、そんな不確かなネット上の情報を「怪文書」に見立て、あらゆる情報から考察を楽しむ展覧会。会場内には100枚以上の怪文書が解説付きで展示されており、その言葉の意味について深く考察することで、来場者それぞれの考える物語が出来上がります。
誰が、どこで、なぜ、この怪文書を書いたのか。
徐々に浮かび上がる背景を考える本企画を通して、情報社会を生き抜くための洞察力、考察力が問われるような体験をぜひお楽しみください。
『その怪文書を読みましたか』は「体験できる都市伝説」なのか
『その怪文書を読みましたか』は、これまで数々の怪談や奇譚、物語を書いてきた梨.psd氏と株式会社闇がコラボした展示会。
「考察型展覧会」と銘打たれたそれはSNS上でも強烈な魅力を放ち、朝10時から受付の当日整理券が30分後には受付終了になるなど、界隈では特に注目のイベンドだったのは間違いない。(その後事前チケット制になるアナウンスがされました。)
私自身梨.psdさんの活動をすべて追っている訳ではないですが、オモコロで掲載されている記事や書籍は読んでおり、SNSを始めとする現代社会のドライさと特有のジメッとした連帯感や閉塞感を多分に含んだ作家性に魅了されている一人です。
今回のテーマである「怪文書」とは電柱や街なかの壁に貼られているアレな文章のことであり、『その怪文書を読みましたか』ではそれに加えてネット掲示板に投稿された書き込みや、よりアングラなスポットから掘り起こされた文章などを100以上点展示されています。
参加者はそれらを鑑賞しながら「いつ、だれが、なぜ、それを書いたのか」という背景に思いを馳せるのがこの展示会の醍醐味でしょう。
周囲一面が怪文書で埋め尽くされる会場はまさに圧巻。
公式サイトにもその一部が掲載されていますが、今回用意された(?)怪文書たちはジャンルやレイアウトもバラバラなのでとても読み応えがありました。
そのすべてが「どこかで見たことあるかも」と感じられるものであり、リアルさと後述するとある違和感含めをまさに都市伝説といっても差し支えないも知れません。
惜しむらくは混雑緩和のため30分ほどしか会場にいられなかったこと。
受付時にスタッフの方からその辺のアナウンスがされ、頃合いを見て展示会をあとにしました。
その分あとから見返す用の写真をバシバシ撮れたのは良かったです。
また、自分で怪文書を作るワークショップも開催されており、テンプレートに沿って怪文書を作ることができました。
横にはくしゃくしゃに丸め込まれたテンプレートの束が山を気づいていましたね。「お手を触れないでください」の注意書きに些細な違和感を覚えたのは私だけではないはず。


『その怪文書を読みましたか』で感じたこと
展示されてる怪文書はどれも"現実感”が凄いものばかりでした。
街の壁や電信柱に貼られているものを剥ぎっとってそのまま持ってきたかのような皺やヨレ、インクの滲みなどが見て取れ、中には太陽光でさらされ続け印字が極限まで薄くなっているものもありました。
そこまで薄くなっているのを誰も剝がしたがらなかったのは、その怪文書が持つ念の凄まじさに尻込みしてしまったからでしょう。
書いてある文章はほとんど日本語で、難しい漢字も使われておらずほぼ全ての文章を読むことができます。
でも理解はできない。
いつの間かそれらは文章から単語と品詞の荒唐無稽な羅列となり、異様な迫力だけが残る。
それこそが怪文書を怪文書たらしめるものなのかなと。
また、今回の展示会を見るまで思いもしなかったんですけど、
怪文書って大きく2種類のタイプがあるんだなって感じました。
先ず1つは不特定多数の人に向けて。
これはいわゆる”神と和解せよ”系なんですが、なにかの注意喚起であったり啓示であったりを広く世の中に示したいっていう気持ちの現れであり、その裏にはある種の善意を感じるんですよね。
手段は別として”良かれと思っていることを率先してやっている”。
もう1つは特定の個人に向けて。
こちらのほうがわかりやすくて、その人に対するメッセージを直接伝える方法がないからやむなくやっている。
内容は苦情や警告など基本的にネガティブで、ぱっと見のヤバさはこちらのほうが上ですね。
怪文書から読み取った個人的考察
さて、膨大な文章を追っていく『その怪文書を読みましたか』ですが、基本的に展示されている怪文書はその1枚で完結しています。
だってそうでしょう。書いた人にしかわからないから怪文書なんですから。
けれども歩みを進めるごとに「あれ?あの表現どこかで見た覚えあるな」と感じる場面が増えていきます。
それは文体であったり筆跡であったり書かれている内容するのですが、全貌は依然として靄がかかっていました。
その靄を払い、散逸する点と点を繋げるキーワードが"妖精さん”という単語でした。
振り返ると妖精さんという単語は序盤から登場しており、時には探されたり時には選定されたりと、とても印象に残るフレーズだったと思います。
これは私の考察ですが、『その怪文書を読みましたか』という展示、そして会場であるマイラボ渋谷は妖精さんと私たち参加者を意図的に繋げるための罠であった可能性が高いのではないでしょうか。
このイベントが盛況で終わることにより、これまで何も知らなかった人たちに妖精さんを広く知らしめることができ、それに感化されたSNSでつぶやくことで更に多くの人へリーチしていく。
そうすることで選定されるに至る人物へ届く確率が高くなっていくのです。
誤解を承知で言いますが、『その怪文書を読みましたか』を訪れたことは失敗でした。会場に足を一歩踏み入れた時点でもうその因果に囚われてしまったのですから。
妖精さんに関する怪文書は文脈から不特定多数の人に向けて書かれているように感じました。
私たちが気づくよりずっと前から囚われている人が良かれと思って書いているのです。
全ては妖精さんのためにと。
株式会社闇が本当に捧げたかったのはなんだったのでしょうね。
おわりに
といった感じで自宅に帰ってからたっぷりと考察しました~~~~~!
めちゃくちゃ面白い展示会でしたね。
普通の意味怖系のイベントかと思いきやコズミックホラーの要素も感じたりと、500円でだいぶお釣りの来るイベントでした。
構造的に続編をポンポン作れるタイプのものではないと思うので、貴重なものに参加できたと感動の気持ちでいっぱいです。
見終わった後に友達とあれこれ語るのが楽しいと思うので、なるべくであれば誰かと一緒に行くのをオススメします。
気になる方はぜひ参加してみてください。そして見つけてください、あなただけの答えを。
妖精ともの会のWebサイトは存在します。こわ。