【ボドゲ駄話】ボードゲームを通して女子小学生のDIY精神に震えた話

「なじみの店でパーティーをやるからボードゲームを持ってきてくれない?」と友人に頼まれたのが1年前。それから数ヶ月に1回ぐらいのスパンでそのお店で開かれるパーティーにボードゲームを持参し、インストや盛り上げ役をやっている。

そのお店はいわゆる地元のラーメン屋で、ラーメン屋なのにオシャレなお酒やおつまみも揃えている結構変わったお店。私は貸し切り時の特殊なタイミングに行くことが多く1度しかそのお店のラーメンを食べたことはないが、マスターのこだわりも感じられる普通に美味しいお店だ。


パーティーには毎回20名ぐらいのお客さんが集まっていて、その大半が家族連れ。小学生の子供が多く、大人たちがワイワイ会話しているのをよそにボードゲームに興じている。

そこで私はいわゆるボードゲームをたくさん持ってきてくれるおじさん役なわけなのだが、はやり大人と子供では刺さるポイントが違うので、毎回様々なゲームを持参してはリアクションを見て、フィードバックして次回にいかしていた。


子供たちの中でも1人とても利発そうな女の子(小学校中学年くらい)がいて、ボードゲームに対する関心が強いしゲームスキルも高い。ある時プレイした『犯人は踊る』では、大人たちに交じりながらプレイしズバリ犯人を当てたのだ。「どうしてわかったの?」と聞くと、「最初に私が犯人を持っていたんだけど…」とそこから論理的に犯人カードの動きを説明してくれたのが印象的だった。自分がその子ぐらいの年だったら絶対にそこまで頭が回らないし、ハナもたらしているクソガキだったに違いない。


そんな感じで数回のパーティー参加を繰り返すうち、持ち込んだとあるゲームが大人にも子供にも爆発的ヒットを見せる。
『ピットデラックス』という商品取引を題材にしたカードゲームだ。

ピットデラックス (Pit) Deluxe 完全日本語版 カードゲーム

ピットデラックス (Pit) Deluxe 完全日本語版 カードゲーム

  • 発売日: 2014/11/15
  • メディア: おもちゃ&ホビー

ルールは単純で、プレイ人数とおなじ数の絵柄があるカード郡を均等に配り手札とする。
プレイの順番はなく、交換したいカードの枚数を口頭で伝え、同じ枚数同士がいれば交換が成立する。見事手札を同じ絵柄に揃えられたらベルを鳴らして独占を宣言し、勝利となる。

ゲームのミソはもちろん最後のベルだ。みんな最後にベルを「チーンッ」と鳴らしたいがために大声を出しながら「2枚!2枚!」「3枚!誰かいない?」とドタバタする。
特に子供たちのボルテージの上がり方はすさまじく、つい最近まであの子たちが赤ちゃんだったことを思い出させてくれるほど。


ゲーム終了時には誰もが疲れからぐったりしているし、パーティーが終わりに差し掛かった時には、親御さんから「この子のこんな声を聞いたのは久しぶりです(*’▽’)」とお褒めの言葉をいただくし、私も『ピットデラックス』の持つパワーを確かに感じていた。このゲームは本当にすごい。


そして先週末。久々にパーティーにお呼ばれしたのでいつも通りたくさんのボードゲームを持ち込み店内へ入る。『ピットデラックス』ももちろん用意万端。
いつも通りマスターと先に来ている常連さんに挨拶をし、テーブルの上にいそいそとボードゲームを広げていると、ふと視界の端に銀色に光るドーム状のものが見えた。


ベルだ。


真ん中のボタンを押せば「チーンッ」となるベルがそこにあった。

慌てて自分のバッグを確かめた。ベルはいまだ箱の中に存在していた。となるとこのテーブルの上にある謎ベルは一体???
そう思っていると件の利発女子が今日の品々を物色しに来たので「あのベルどうしたの?」と聞くと、「作ったの」と答えた。「なにを?」「ピットを」


なんだって?(;'∀')


一瞬膠着していると、彼女は自分のポーチからスリーブに入った名刺大のカードの束を見せくれた。きちんと同じ大きさに切りそろえられた紙に、自分で描いたのだろうキャラクターや模様があしらわれている。同じ枚数でグループ分けされたそれはまさしくピットで使用するカードだった。


話をよく聞くと、ピットデラックスが彼女含め子供たちに大変好評だったようで、私がいない時でもプレイしたいので自分たちで作ろうということになったらしい。
彼女たちはピットを1日しか触っていないハズなので、あの短期間でゲームのルールとデザインを理解して再現し、自力では作れないベルの部分を100均で見つけて対応する柔軟な発想で自分たちだけのオリジナルピットを作ったのです。なんという実行力でしょう。


正直彼女たちのDIY精神に心を揺り動かされました。もちろんピットデラックス自体のエンターテインメント性が高いのが一番ですが、自分が持って行ったゲームをそこまで気に入ってくれたのがうれしかった。


せっかくなので彼女たちが作ったピットデラックスで遊ばせてもらうことにしました。自分のはいつでもプレイできるので。
模様が全面にびっしりと描かれているカードが一種類だけあって、それ以外はトランプの数字のように四隅にマークが書かれているだけ。おそらく最初のカードを凝りすぎた結果、残りの作業がつらくなったのだろう。こらえ性のないところも子供っぽくていい。

大人はお金があるから最悪買えばいいけれど、子供はお金がないが故の方法で自分たちの願いを叶えていくんだなと、久しぶりに出会えた感情にとても清々しい気持ちになった。子供ってすごいなぁ。


「凄くできがいいから写真撮っていい?」と聞いたら食い気味に「ダメ」と一蹴される。悔しかったので「今の紙だとペラペラで直ぐに折れちゃうから、後ろに厚紙を入れて補強した方が長く遊べるよ」とアドバイスをしておいた。