全国150万人の”古本屋巡りをするときは太い本を1冊ではなく細い本をたくさん買う”皆さまいかがお過ごしでしょうか。鈴村リク (@alfbds0954) です。
今回は不定期に販売される持ち帰りなぞ『通りめ』の感想です!
※ネタバレを含む投稿です。
【ストーリー】
こちらの書物には、ひとつの「曰く」がございます。 ――読むと行方不明になる。
真偽のほどは定かではございませんが、そう囁かれて久しい「奇書」でございます。
この書物は、つい先日まで別の持ち主の手元にあったと聞いております。
ただ、その人物もやはり、現在は行方が知れないとか――。
書物とともに発見された資料も、併せてお納めいたします。
個人的満足度★★★★★★★★★ ☆ 9/10点
ざっくり感想
トリッキーな持ち帰り謎や宿泊型イベントに定評がある謎組の持ち帰り謎である『通りめ』を遊びました。
曰くつきの一冊の奇書をめぐる本作ですがめーちゃくちゃ面白かった!
謎自体面白かったのはもちろんなんですが、物語への感情移入度がほかの持ち帰り謎と段違い。
この作品は歯応えのあるパズルや心折れる論理の飛躍など、いわゆる謎解き猛者を唸らせる要素はありません。
ですが手元にある情報をもとに推理を行いじっくりと物語を進めていく、ARGのような体験が楽しめました。
物語の没入は、まず本書を手に入れる段階から始まります。
購入できるサイトは、なんと期間限定でその門戸を開き、資格のあるものに購入権利を与えてくれるのです。
なんとワクワクさせてくれるオープニングなのでしょうか。
きっかけとなる書店「幻境堂」の語り口も雰囲気があり、一気に引き込まれした。
そして届いたのがこちら。
風呂敷に包まれて送られてくるというなんとも古風な演出。最高すぎる。
めくっていくと・・・
奇書『通りめ』がその姿を表します。
販売当初から話題になっていたのは、やはりこの一部が焼け落ちたビジュアルでしょう。
一応言っておきますが、本当に焦げています。ほんのりと香る煤の匂いが私の首根っこを掴み、奇妙な世界へと誘っていくのです。
文庫本サイズの本作は、私がこれまで遊んできた書籍を題材にした謎解きの中でも本として屈指の完成度を誇っており、もしこの本が神保町の古本屋に並んでいたら思わず手に取ってしまうことでしょう。
読むと行方不明になる本。
その中身は複数の視点から紡がれるオムニバスの物語。
時代や立場は別々ですが、とある出来事によって日常が一変してしまった人たちの激動が綴られていました。
とくにね、男性の章が本当に辛い。
自分の頑張っていたことや努力が報われなかった時、そもそも頑張り自体が無駄だったことを突き付けられてしまった時、人は無慈悲な運命に膝を屈せずにいられるのだろうか。
この作品から投げかけられるある一つの問い。
甘くて苦い選択肢が、より物語に深みを与えていくのです。
正直、文庫本の体裁になるだけでここまで感情を揺さぶられてしまうのかと、若干戸惑う自分がいます。それだけすごい作品などだと思いますよ。
謎の感想
実はキットには『通りめ』のほかにいくつかの資料が同封されています。
その資料や本を読み込んで、物語を進めるキーワードを拾っていくため、やはりARGやアドベンチャーゲームの色が強いなと感じました。
前述した通りパズル要素や一般的な小謎はないため、ストレートに謎を解きたい人は素直に別の持ち帰り謎を買った方が良いですね。
とはいえ作製しているのはあの謎組、キーワード探しは一筋縄ではいきません。目を皿のようにして文章の中に答えを探していきます。
その姿はまるで現代文のテストを受けていたあの頃に戻ったかのよう。めちゃくちゃ楽しかった。
思えば謎組の謎はいつもお世話になっているLINE謎くらいしかプレイしていなかったんですが、これまでなんでやってなかったのか。
繰り出される切れ味の鋭い謎を肩から腰まで袈裟懸けにくらい、ぶっ倒されたでした。
あのギミックを、あの文量で!
完全KOです。対戦ありがとうございました。
おわりに
というわけで奇書『通りめ』の感想でした。
物語で心を揺さぶられ、謎解きでぶん殴られる素晴らしい体験ができましたよ。
謎組ではこれからも定期的に販売がされるとのことで、興味のある方はぜひ購入してはいかがでしょうか。きっと忘れられない作品になると思います。
それではまた。

