【レビュー・感想】 『Her Story』 見つけよう、"彼女"の物語を

全国150万人の”ついつい2時間サスペンスを見てしまう”皆さまいかがお過ごしでしょうか。鈴村リク (@alfbds0954) です。

今回はいつもと少し趣向を変え、昔プレイしたとても好きなゲーム
『Her Story』について書いていこうと思います。

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【ストーリー】
1994年のイギリスで、一人の男性が行方不明となる事件が発生した。その男性の妻とされる女性に対する事情聴取は数日間、7回にも及び、その際に録画された映像は警察のデータベースに保存されている。 プレイヤーは警察の端末を操る人物となり、分割された事情聴取映像を元に事件の手がかりを探っていく。
動画内に散らばるキーワードを元にデータベースを検索し、事件の真相を導き出しましょう。


日本語版トレーラー↓
https://steamcdn-a.akamaihd.net/steam/apps/256675141/movie480.webm?t=1479823340

≪一言≫
取り調べ映像から事件の真相を"読み解く”ミステリー。検索力を鍛えるのにおススメ

ただ、過去を読み解くのみ

『Her Story』は、『Silent Hill:Shattered Memories』などを手がけたというSam Barlowによる "ストーリー探索型"ゲーム

store.steampowered.com

このゲームは普通のゲーム機ではソフト化されておらず、Steamでのみ配信されている少しプレイするには敷居の高いゲームですが、 細部までこだわった造詣と独特の空気感、シナリオの見事な語り口で一度プレイした方には忘れがたい体験を与えてくれることでしょう。


プレイヤーがゲームを起動すると、出迎えてくれるのはブラウン管モニターに表示されたWindows95のような4:3画面のデスクトップ。
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そのゲーム内PCを操作して、警察署のデータベースに記録された実写映像から"彼女の物語"を紐解いていく、というのが作品の大まかな流れ。
データベース上にある映像内での発言は全てインデックス化されており、これだと思う単語を検索することで新たな映像を見つけることができます。
画面中央にある検索欄に単語を打ち込み、ヒットして出てきた映像を閲覧し、その映像での発言をヒントにしてさらに新しい言葉で検索していく……というのを繰り返すことでゲームが進行するわけです。

例えば検索欄にはゲーム開始時から殺人と記入されていますが、その状態で検索ボタンを押すと殺人という言葉が発せられた映像の一覧が表示されます。
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映像を再生すると、途中にサイモンという謎の人物の単語が。さっそく検索してみましょう。
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新たにサイモンという単語が含まれる映像が検索されました!!基本的にはこの繰り返し。
ラストまでこの操作は一貫しています。

プレイヤーは、5秒から1分半までの細切れな271件もの映像ファイルから何が起こったのかを読み取りつつ、どの単語で検索するか頭を悩ませなければなりません。



検索回数に制限はありませんが、1回の検索で表示できる映像は5つまで。6つ以上ヒットする場合には最初の5つだけしか表示されないため、より細かく絞り込むためには、複数の言葉をいれて検索したり、別方面からアプローチしたりと工夫を凝らす必要があります。

攻略方法としては、 気になる単語があったらとにかくメモること。
それは彼女の言葉以外でも、背景や彼女が身に着けているものも対象です。そして自分の推理を思い切って検索してみるのも、物語を進める大きな手掛かりになるはずです。

彼女から目が離せない

このゲームの素晴らしいところは、プレイヤーが検索欄にどのような言葉を入れようとも、彼女に影響を与えることが一切できませんし、ルート選択なども一切ありません。
できるのはただ事実を「視る」ことのみ。それでも物語は進み、時には驚くべき真実にたどり着くでしょう。


警察署のデータベースを検索するという作業も、こちらは実際にPCを操作しているわけですから没入感もかなりのもの。見た目はレトロでも動作はサクサク、検索履歴は全て保存され動画のシークバーもわかりやすく英語字幕も標準表示、基本操作は左クリックと文字入力のみというシンプルさも実に見事。開発者が「Googleを使えるならこのゲームは遊べる」と豪語する通り、インターフェイスはとても使いやすく遊びやすくできています。


また、このゲーム最大の魅力はヴィヴァ・セイフェルトさん。
そう、トレーラーにも出ている、このゲームの顔である女優で歌手の方です。
プレイヤーはひたすら彼女の言葉を聞くわけですから、その女性に魅力が欠けていたんじゃあ務まりません。
そんな難しい役どころを彼女は見事にこなしていて、口調や仕草など時に無邪気で、時に妖しさ満点のバランス感覚で、私たちの興味をグイグイと引き付けてくれます。
とあるシーンでは彼女の弾き語りも聴くことができ、その多才さが垣間見えることでしょう。
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彼女によって断片的に語られるストーリーは、もちろん一筋縄ではいきません。 しかし、彼女の言葉に耳を傾け、時には疑い、あるいは信じ、映像を探し出すため検索ワードを入れてエンターキーを押す興奮と、新しい映像を再生する瞬間の手に汗握る緊張は、この『Her Story』というゲームシステムでしか体験のできないものだと思います。 詳しい事ひとつでもネタバレになりそうなので触れませんが、システム上はじまりから終わりまで全て並列に配置されている中で、起伏を盛り込んで最後まで飽きさせない作りは本当に凄い。

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ド派手なアクションやファンタジーな世界観もない、小さく地味なゲームなので、正直好き嫌いが分かれる気はしますが、私のブログを読んでいる方ならきっと面白いと感じてくれると思います。
¥1,000円ちょっとで遊べるので、まだプレイしたことのない方はぜひぜひ挑戦してみてください!

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

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