【感想】『 #のぞきみZOOM 』はSTAY HOMEだからこそ楽しめた最高のエンタメだった

皆さまいかがお過ごしでしょうか。鈴村リク (@alfbds0954) です。

新型コロナの影響で日本にも緊急事態宣言が出て、なかなか積極的に外に出られない時勢になりました。巷では「STAY HOME」を合言葉に、様々な団体や企業がネットを通じて企画やイベントを行っています。

そんな中、謎解きを通じて物語体験を提供しいてるSCRAPが、「大変な時期だからこそ、皆さまをエンタメの力で元気にしたい!」という志のもと、自身のYouTubeチャンネルで『緊急生放送!こんばんは!SCRAPです。』という放送を開始。約週1回のペースで動画を生配信しています。(2020年4月現在、全放送がアーカイブで残っています。)

そして『こんばんは!SCRAPです。』の第3回目の放送で配信されたのが、
この『のぞきみZOOM』という企画でした。


緊急生放送!!『こんばんは!SCRAPです。』vol.3

のぞきみZOOMとは

のぞきみZOOMは、今回の司会進行を務めていたきださおり氏が手掛けているイベント、『のぞきみカフェ』のYouTube版。

note.com

同じカフェに偶然居合わせた他人の人生を、ちょっとだけ覗き見ることができ、さらに覗き見して得た情報や、聞こえたワードを検索して得た情報を、対象者に教えてあげる、 という、なかなか普通の人生ではできない体験コンセプトをそのままYouTubeに移植し、Webで体験できるイマーシブシアター(観客参加型演劇)に仕上げています。


観客である私たちには、本編が始まる前にきださおり氏からの事前説明兼チュートリアルがなされます。
これから始まる物語の中で、見えるもので気になるものがあれば調べると良いこと。調べてみた結果いろいろな選択肢が浮かぶかもしれないこと。そして自ら行動しても良いこと。
生配信なので、私たちの働きかけがダイレクトに劇中に反映されることを考えると、必然的に当事者意識が芽生え、関わっていこうという気持ちにさせてくれます。


物語はとある男女2人の、一見するとなんでもない普通のZOOM(オンライン会議ツール)を使った会話。けれども2人の会話の端々、見切れるアイテム、表情の一つにすら、お互いに秘めた思惑が見え隠れしていきます。そして、そんな2人の人生の決定的なターニングポイントに私たちが立ち合い、ともすれば背中をぽんと押すことができる。まさか家にいてこんなに面白いエンタメを体験できるとは思いませんでした。

会話を覗き見るという背徳感

ゲームがスタートすると先ほどまでのスタジオの画面から、ZOOM上で2分割された枠に男女が各々の部屋からPCを使って会話している画面へ切り替わります。
こちら側からは完全に2人の動きが見えているけれど、あちら側からは全く認識されない。不思議なのぞきみタイムのスタートです。

この何気ない会話を覗き見る状況が非常に魅惑的でして、一般的に他人の話を立ち聞きする行為って、良くないことに分類されていると思います。誰だって自分たちの話に聞き耳を立てるやつらがいたら、いい顔をしません。 けれども自分がもし聞ける立場になったらどうでしょう。「聞いたらイケナイ…でも聞きたい!」という欲求に駆られるのではないでしょうか。

劇のフォーマットであるZOOMや登場人物が使っているSNS、生活状況など、本当に私たちの日常と変わりがありません。そのあまりにも"日常的過ぎる”リアルさに、 現実と非現実の境がとても希薄なものになりました。そしてその希薄さが背徳感により拍車をかけ、私たちをより物語へと没入させようとしてくるのです。

観劇しながら補足情報を「手で探す」おもしろさ

このゲームでは、ただ漠然と映像を見ているだけではすべての物語を読み解くことはできません。 彼らの言葉や部屋の背景をヒントに、自らネットで検索して情報を集めていく必要がありました。例えば劇中でAが「最近○○ってお店に行ったんだ」という会話があったとしたら、ネットで調べてみるとちゃんと○○というお店のサイトがあり、その中のブログ的なページにAが映った写真が掲載されていたりと、かなり細かいところまで周到に準備がなされています。

たどり着いたページも、まとめサイトやTwitterのアカウント、ブログ、一目でやべぇと分かるサイトとメッセージなどバラエティに富み、こちらの検索欲をどんどんと満たしてくれます。

また観劇しながら検索というシステムが、実際にやってみるととっても忙しい。こちらが気になったキーワードを劇の中から見つけ、インターネットで検索してお目当てのページを探し、中身をふんふんと読みふけっている間にも劇は進んでいて、新たに気になる話をしているものだから、目と手と耳をフル稼働させながら必死にくらいついていく私。

普段のイマーシブシアターだと、気になるところへ「自らの足を使って」「行動して」情報を探しますが、のぞきみZOOMでは「自らの手を使って」情報を探していく。プロセスは違えど、イマーシブシアターのおもしろさが損なわれていないのは、さすがですね。

YouTube Liveならではの一体感

そして素晴らしかったのはこの企画が配信されたのがYouTubeだということ。
YouTubeで配信を見る場合、画面の横か下に現在この配信を見ている人たちのコメントが表示される仕組みになっています。

コメントでは様々なやり取りが行われていました。物語の展開について感想を呟く人、キーワードを見つける人、その検索結果に慄く人。 家でバラバラに映像を見ているのはずなのに、同じ会場で同じチームになったかのような連帯感。これぞWebならではの体験だったのではないでしょうか。

その連帯感の極致でもあった物語の終盤。登場人物のある行動を後押ししようと怒涛の勢いで流れるコメント欄。モニターの向こう側へ垣根を越えて働きかける人たち。誰もが思っている感情を素直に発し、それが物語のエモーショナルさに繋がっていく。私たちは舞台の上には立ちませんでしたが、確かに物語の登場人物でした。

彼女が電話を受けてお礼を言うシーンもグッときましたね…本当に良かった。

体験できて良かった

大好きな謎解きやボードゲームを気兼ねなく楽しめない状況で、少しエンタメに対して飢餓状態だったのかもしれませんが、今回ののぞきみZOOMを体験して非常に心を揺さぶられました。企画のコンセプトや物語も素晴らしかったですが、その後ろに製作者陣の「エンタメなめんな」という熱い意志を感じて、心の中で大号泣ですよ。

また、これまで生のキャストとのやりとりこそ魅力だと思っていたイマーシブシアターが、コンセプトががっちり合えばWebでも面白いものができるじゃないかと思わせてくれる、そんな素晴らしい作品だったと思います。体験できて本当に良かった。

ちなみにのぞきみZOOMはまだアーカイブで残っていますので、未体験の方はぜひご覧になってください。コメントも保存されているので、当時の熱狂を見ることもできます。逆に一人で世界観を楽しみたい方はコメントOFFで挑戦してみてください。

こうなったらリアルののぞきみカフェにもぜひ行ってみたいですよね。神出鬼没だそうなので要チェックしておかなければ…

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